プレミアムやポイント還元事業は、何のために?
区政レポート
2025.04.01
行政経営
プレミアム券やポイント還元事業は、本当に消費喚起・経済活性化に繋がっているのか?
プレミアムやポイント還元事業は、何のために?
本当に消費喚起・経済活性化に繋がっているのか?
板橋区プレミアム付商品券事業費補助金交付要綱によると👆
目的:エネルギー・食品価格等の物価高騰による影響を受けている飲食店をはじめ、小売・サービス業等を営む事業者及び区民等の生活支援を図る。
板橋区商店街振興組合が実施するデジタル地域通貨事業補助金交付要綱によると👆
目的:キャッシュレス決済の推進と区内における消費の拡大による区内経済の活性化を図る。
―プレミアム商品券やポイント還元事業の効果―
これらの事業は、令和元年ごろから全国的にはじまった事業です。
その背景には、消費税率のアップやコロナ禍の消費喚起がありました。
この様にある一定期間に絞った瞬間風速を出すには、非常に効果的であり、各種分析でも一定の効果がある事は、証明されています。
例えば、板橋区を見てみると恒例の事業となっています。恒例となると市中にキャッシュをばら撒かないと地域経済のトレンドがその時期だけ下降トレンドになってしまいます。
本調査では、スポット実施と恒例事業とでは、アウトカムが異なりますので、2つの視点から各種調査・分析データを読み解きながら効果について考察を記したいと思います。
【1】上記各事業の目的を見ると瞬間風速を吹かせる事により期間中一定の売り上げ上昇をたたき出す事は、可能と考えますし、区が行ったアンケート結果でも実に77%の事業所が期間中の売り上げ増があったと回答しています。スポット事業としては、一定の成果が上がっています。これは、例えば横浜市の調査では1.5倍の効果があったとの評価結果もあります。板橋区の場合、ここまでのフォローがない事が事業継続の根拠に欠けると思います。
【2】物価高騰は、一時的なものではなく現に東京都区部のCPIも総合値2.9%です。(3月28日発表)物価高騰の影響についての定義はなく「物価高騰」だけを抽出するとCPIが下がるまで通年実施しなければならずこれでは、財政が持ちません。当然、通年実施は現実的ではないと評価できます。
また、区内経済の活性化とは、持続可能な経営・事業展開にもって行かなければなりませんので、瞬間風速を吹かせるだけでは、活性化に全く繋がらないと言う評価ができます。
【3】各種調査・分析を読んでいくと難しい結果も報告されています。
プレミアム付商品券を複数年実施したとしても消費喚起率には、影響がない事が確認されています。また、特定の品目の中には、一定のプレミアム率を超えると消費喚起額が抑制されるメカニズムもあると確認されています。
内閣府地方創生推進室の報告によるとプレミアム率の高さが消費喚起額の大小に必ずしも影響しないとの評価があります。
次に所得における購入行動の分析データもあります。
それは、低所得層ほどプレミアム商品券を購入していないこと、高所得層ほど期待する「最低プレミアム率」が低いデータもあります。これは、大きな課題だと思います。低所得層が購入しやすいメカニズムを構築しなければならず本事業の欠陥とも言えると評価します。
【4】これら還元事業の源資は、税金で現金ですから「ヘリコプターマネー」とも言えるかと思います。物価高騰対策として実施していますが、マクロ経済の理論では、物価を押し上げる政策にもなるわけです。また資本主義経済下では、市中にばら撒かれたキャッシュは、稼ぐ力のあるところに集まりますから貧富の格差を進行させる作用もあります。これは、現金給付事業で顕著に現れます。
上記目的を達成し税金投入の効果・成果を上げるには・・・
➀瞬間風速を吹かせ消費者を商店へ呼び込みます。
②各個店は、消費者から継続的に支持されるマーケティング戦略を立てる。
③板橋区役所の支援は、消費動向や経営戦略支援を行いキャンペーン期間に備える。
簡単に示すとこの様な事業展開に変更すると区内消費が好循環に動き出すものと考えます。したがって、現段階では高評価とは、言えない事業であると結論づけます。

参考文献
石原俊之先生「複数年実施した場合のプレミアム付商品券事業の消費喚起効果」※査読付き論文
後藤晶先生「プレミアム商品券の経済行動:購入判断に対する社会経済的要因に着目して」
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