板橋区の行政評価制度の再構築案の問題点と改善提案
区政レポート
2026.06.06
板橋区議会
テーマ:
板橋区の行政評価制度の再構築案の問題点と改善提案
今回の行政評価制度の再構築案では、ロジックモデルの導入や定性情報の重視が謳われています。
もちろん区民へのわかりやすさは大切ですが、経営資源を投じる以上、すべての事業や施策は、区の最上位計画が目指す『最終的な達成目標』、いわゆる経営ゴールに直結しているべきだと考えます。
提示された資料(ロジックモデルの導入や定性情報の重視など)を拝見する限り、この制度改革は「職員の作業負担軽減(制度疲労の解消)」や「見栄えのよいストーリー(ナラティブ)作り」に終始しており、「限られた経営資源をどこに集中投下し、いかに最大のリターンを得るか」という『経営・投資』の視点が決定的に欠落しています。

サラリーマン出身議員として、この制度設計に不足している「4つの致命的な欠陥」を具体的に指摘します。
1.税金の視点(コスト・ROI)の完全な欠落
投資家が最も重視するのは「いくら投じて、どのような価値(リターン)が生まれたか」です。
しかし、この評価体系には「コスト(予算・人件費)」を掛け合わせる視点がありません。
「効果」だけを見る危うさ👉
定量・定性で「効果がありました」と報告されても、それが1,000万円で達成されたのか?10億円かかったのか?で
投資としての評価は180度変わります。
サンクコスト(埋没費用)の温床👉
「事業評価」において、新規・拡充事業を3年目に振り返るとしていますが・・・
ここに「コストパフォーマンス(費用対効果)」の厳格な監査基準がなければ、ズルズルと予算が付き続ける「ゾンビ事業」を排除できません。
2.KGI(ゴール)なき「プロセス評価」への逃避
ご指摘の通り最上位のKGI(最終的に区が目指す成否の基準)が曖昧なまま各論の施策や事務事業を評価しようとしています。
定性・ナラティブの悪用リスク👉
資料には「区民の共感や納得感」「ナラティブな定性情報」という言葉が踊っています。
一見サステナブルで現代風に見えますが、私から見れば数字で成果を出せなかったときの言い訳」に使われるリスクが非常に高いと感じます。
ストーリーはエビデンスにならない👉
「背景やストーリーを含めて伝える」ことは広報としては正解ですが・・・
行政評価(ガバナンス)としては副次的なものです。
主従が逆転し、「物語が感動的だから、数値目標は未達でもOK」という甘え(モラルハザード)を生む構造になっています。
3.時間軸の致命的な遅さ(PDCAの機能不全)
投資の世界では、市場の変化(住民ニーズの変化や経済情勢)に合わせてリアルタイムせめて四半期での軌道修正が求められます。
施策評価のタイムラグ👉
資料によると施策評価のタイミングが「中間評価」「最終評価」となっています。
もし2026年現在からスタートする場合、中間評価まで数年も PDCA を回さない(進行管理のみで本格的な評価をしない)ことになります。
これでは変化の激しい現代において、手遅れ(投資の失敗)を検知できません。
3年目評価の遅さ👉
新規事業を「原則3年目」に評価するのも遅すぎます。
スタートアップ投資なら3年もあれば資金が底をつきます。
1年目、2年目の段階で「仮説検証(PoC)がうまくいっているか」をスクリーニングする「ゲート(関門)」が存在しません。
4.インセンティブと「撤退基準(リロケーション)」の不在
優れた投資・経営システムには「成果を出した事業に原資を厚く配分し、成果の出ない事業からは撤退する」という代謝機能が組み込まれています。
「増やす」だけで「削る」仕組みがない👉
「将来に向けた経営資源の創出」と綺麗にまとめられていますが・・・
具体的に「評価結果をどう予算編成や事業廃止(スクラップ&ビルド)に直結させるか?」のダイナミズムが見えません。「評価表はサマカン(査定面談等)の参考資料とする」程度の手ぬるい扱いでは、結局は前年踏襲の予算配分を打破できず、「財政構造の硬直化」を招くだけです。
💡 民間出身の元山からの改善提言(カウンタープロポーザル)
もし私が板橋区の経営者なら、以下の修正を指示します。
- 「行政版・投資対効果(Social ROI)」の導入👉すべての事業評価に投入した「予算+職員の稼働時間(人件費)」を明記させ、コスト1単位あたりのインパクトを算出させる。
- 定量KGIの下方展開👉最上位の基本計画に紐づく明確な「KGI(目指す絶対的な数値・状態)」を置きそれをブレイクダウンした形でのみ「KPI」や「ナラティブ(定性)」を補足として認めさせる。
- イグジット(撤退)ルールの明文化👉「3年目評価でD評価、または2年連続で目標乖離が30%以上の場合は原則凍結・廃止」といった、感情を排除したガバナンスルールを組み込む。
【総括】
現状の「シン・行政評価」は、行政側の「評価作業が大変だから定性的なストーリー共有でマイルドに済ませたい」という内部都合(プロダクトアウト)の域を出ていません。
「区政の発展(リターン)」を最大化するための「攻めのガバナンスツール」へと昇華させるためには、「KGIの厳格化」と「投資効果の審査(コスト意識)」の導入が不可欠です。
