板橋区議会から見た板橋区の空き家対策の今後について
区政レポート
2026.08.28
板橋区議会
テーマ:
板橋区議会から見た空き家対策の今後
放置すれば税負担が大きくなる?
この夏は、私の提唱する「割れ窓の理論とまちづくり」の視点で東京都及び板橋区の「空き家対策」を東京都や関係各地を訪問しながら研究してまいりましたのでまとめて徹底解説します。
「実家を相続したけれど、誰も住む予定がない」
「古くなった家を壊したいが、更地にすると固定資産税が上がると聞いた」
「空き家を放置すると固定資産税が6倍になるというのは本当?」
こうした問題は、もはや一部の地方だけの話ではありません。
東京23区に土地や住宅を所有している人にとっても空き家問題は非常に身近な問題になっています。
そして今、国や東京都の空き家政策は大きく変わっています。
👆ポイントは・・・
「危険になった空き家を処理する」政策から🔜「危険になる前に管理・活用を促す」政策へ転換し始めたことです。
今回は、東京都及び板橋区の資料をもとに「空き家と固定資産税の関係」2023年に改正された「空家法」そして、これから自治体に求められる空き家政策について、できるだけわかりやすく解説します。


1.日本の空き家は約900万戸へ
まず、日本の空き家がどれほど増えているのかを見てみましょう。
総務省の2023年「住宅・土地統計調査」によると全国の空き家は約900万戸となりました。
2018年の約849万戸から約51万戸増加し、過去最多です。
総住宅数に占める空き家率も、13.8%と過去最高になっています。
さらに注目したいのが、賃貸用、売却用、別荘などを除いた空き家です。
こうした空き家は約385万戸に達しています。
つまり日本では「次に使う人が決まっていない住宅」が大量に存在しているのです。 (総務省統計局)
背景には、• 少子高齢化・人口減少• 親から住宅を相続したものの住む予定がない• 高齢者施設への入居• 解体費用の負担• 相続人が複数いて意思決定できない• 売却・賃貸したくても需要がない• 固定資産税との関係から解体をためらうなど、さまざまな事情があります。
空き家は「所有者個人の財産」の問題であると同時に周辺住民の安全、防災、防犯、景観、地域経済、土地利用に影響するまちづくりの問題になっています。
板橋区内における「割れ窓の理論とまちづくり」を提唱している私としては特に「防犯・景観」を重視します。
2.そもそも「空家等」とは?
法律上の「空家等」は、単に「今、人が住んでいない住宅」という意味ではありません。
空家法では、建築物やそれに付属する工作物で、居住その他の使用がなされていないことが常態となっているものと、その敷地などを「空家等」としています。 (東京都税務情報)
👆重要なのは・・・
建物だけではなく、その敷地も含めて空家等として捉えているということです。
空き家を放置すると、建物だけの問題では済みません。
庭木の越境、雑草、害虫、ごみ、不法侵入、火災、倒壊など、周囲へ影響が広がっていく可能性があります。
3.特に問題となる「特定空家等」
空き家だからといって、直ちに行政から強い措置を受けるわけではありません。
問題になるのは、適切に管理されず、周囲へ深刻な影響を及ぼすようになった空き家です。その代表が「特定空家等」です。
法律では、おおむね次のような状態が対象になります。
①そのまま放置すれば倒壊など、著しく保安上危険となるおそれがある
②そのまま放置すれば、著しく衛生上有害となるおそれがある
③適切な管理がされていないことで、著しく景観を損なっている
④その他、周辺の生活環境を守るために放置することが不適切
つまり「古い家=特定空家」ではありません。
管理状況や周辺への悪影響などを踏まえて判断されます。 (東京都税務情報)
4.新たに重要になった「管理不全空家等」
👆ここが近年の空き家政策を理解する重要なポイントです。
2023年12月に施行された改正空家法によって、「管理不全空家等」という考え方が導入されました。 (国土交通省)
👆簡単に言えば・・・
「今すぐ特定空家というほどではないが、このまま放置すれば特定空家になりかねない住宅」です。
これまでの制度では、かなり危険な状態になってから行政が本格的に介入する傾向がありました。
しかし、それでは遅い。
そこで、特定空家になる前の段階から行政が改善を促す方向へ制度が変わったのです。
これは非常に大きな政策転換です。
5.「管理不全空家」でも税制上の措置がある
ここは所有者にぜひ知っていただきたいところです。
東京都23区では、住宅の敷地には通常、固定資産税・都市計画税を軽減する「住宅用地の特例」があります。
ところが「特定空家等」だけでなく「管理不全空家等」についても、区から勧告を受け、賦課期日である1月1日までに必要な措置が講じられなかった場合、その土地は住宅用地特例の対象から除外されます。 (東京都税務情報)
👆つまり「まだ倒壊寸前ではないから大丈夫」ではなくなったということです。
国の政策は明確に「所有している以上、適切に管理してください」という方向へ進んでいます。

6.なぜ「固定資産税が6倍」と言われるのか?
ここは非常に誤解されやすいので、少し詳しく説明します。
住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」があります。
東京23区の場合、小規模住宅用地、つまり原則として住宅1戸につき200㎡までの部分について、固定資産税の課税標準は、価格 × 1/6となります。
都市計画税については、価格 × 1/3です。200㎡を超える一般住宅用地についても、固定資産税は価格×1/3、都市計画税は価格×2/3という特例があります。 (東京都税務情報)
この「1/6」があるため「特例がなくなる=固定資産税が6倍」と説明されることがあります。
しかし、ここには注意が必要です。
7.「税金が必ず6倍になる」は正確ではない
住宅用地特例から外れると、固定資産税の課税標準が最大1/6に抑えられていた仕組みがなくなるというのが正確な説明です。
実際の納税額は、土地の評価額、負担調整措置、都市計画税、東京都独自の軽減措置などによって変わります。
したがって「空き家になったら固定資産税が6倍」でも「特定空家に指定された瞬間に税額が6倍」でもありません。
より正確には、特定空家等または管理不全空家等について自治体から勧告を受け、必要な措置を講じないまま一定の要件に該当すると、住宅用地特例から外れ、土地の税負担が大きく増える可能性がある。ということになります。 (東京都税務情報)
👆ここは非常に重要なポイントです。


8.では、空き家を解体すればいいのか?
「それなら危険な空き家は壊せばいい」当然そう考えます。
ところが、ここに現在の空き家政策が抱える難しい問題があります。
住宅用地特例は、その名の通り住宅の敷地に対する特例です。
原則として住宅を解体して更地にすると、住宅用地ではなくなります。
その結果、住宅用地特例がなくなり、土地の固定資産税等が上昇することがあります。
東京都主税局も特定空家等または管理不全空家等を取り壊した場合、賦課期日時点で住宅の敷地ではなくなるため、原則として住宅用地特例が適用されないと説明しています。 (東京都税務情報)
もちろん、住宅の建て替えについて一定の要件を満たせば、特例を継続できる場合があります。 (東京都税務情報)
9.ここに「空き家対策のジレンマ」がある
私は、ここが今後の空き家政策を考えるうえで非常に重要だと考えています。
行政としては「危険な空き家は早く解体してください」と言いたい。
一方、所有者からすると「数百万円かけて解体したうえ、翌年から土地の税負担まで増えるのか」という問題が出てきます。
つまり制度上、空き家を除却することによって、所有者の経済的負担が増えるケースがあるわけです。
これが老朽空き家の解体をためらわせる一つの要因になり得ます。
だからこそ、これからの自治体政策には「指導・勧告」だけではなく、所有者が動きやすくなる制度設計が必要です。
10.久留米市の取り組みが興味深い
参考になるのが福岡県久留米市です。
久留米市では、一定の要件を満たした老朽化した危険な空き家を解体した場合、住宅用地特例がなくなることで増える固定資産税等について、解体前の税額と同等になるよう減免する制度を導入しています。
対象となれば、解体翌年度から最長3年間減免されます。
ただし、危険度の事前確認、勧告を受けていないこと、売却・賃貸の媒介契約を結んでいることなど複数の要件があります。 (久留米市公式サイト)
非常に興味深い政策です。
なぜなら「危険だから壊しなさい」だけではなく「壊したことで税負担が急増する問題にも対応する」という発想だからです。
さらに売却・賃貸の媒介契約を要件とすることで、単なる更地化ではなく、跡地の流通まで促そうとしています。
11.空き家対策は「壊す政策」だけではいけない
👆ここからが、まちづくりとして重要です。
空き家対策というと・・・
「危険な家を見つける」
👇
「所有者を探す」
👇
「指導する」
👇
「解体してもらう」という行政対応を想像しがちです。
しかし、人口減少社会では、それだけでは問題は解決しません。
必要なのは、発生予防 → 管理 → 流通 → 利活用 → 除却 → 跡地活用までを一つの政策として考えることです。
例えば、まだ使える住宅なら・・・•
売却• 賃貸• リフォーム• 子育て世帯への住宅供給• 高齢者住宅• シェアハウス• 地域交流拠点• 福祉施設• スタートアップや地域事業者の拠点などへの転換も考えられます。
逆に老朽化が激しく再利用が難しい住宅については、速やかな除却を促し、その跡地を新しい住宅、地域施設、広場、防災空間などへ循環させる必要があります。
12.東京23区こそ「空き家=地域資源」と考えるべき
東京の空き家問題には地方とは違う特徴があります。
土地需要が比較的高く、住宅、店舗、事業所、地域活動など、新しい用途へ転換できる可能性があります。
だから私は「空き家=迷惑施設」とだけ捉えるべきではないと思います。
見方を変えれば、空き家は、まちの中で十分に使われていない不動産資産です。
行政の役割も「危険な空き家を取り締まる」だけではなく、眠っている不動産をどう地域の価値に変えるかへ進化させる必要があります。
13.必要なのは「空き家になる前」の政策
実は空き家対策で最も効果的なのは、空き家になってから対応することではありません。
空き家になる前に動くことです。
高齢の所有者が元気なうちに「この家を将来どうしますか?」と考えてもらう。
相続人を確認する。
登記を整理する。
売却するのか?子どもが住むのか?賃貸するのか?解体するのか?を家族で話し合っておく。
👆いわば、「住宅の終活」です。
行政も、空き家になって何年も経過してから所有者を追いかけるより、福祉、相続、住宅、不動産などを連携させ、早い段階から相談できる仕組みを整えるべきでしょう。
14.空き家対策を「まちの資産循環政策」へ
これから人口減少が進めば「住宅をたくさん建てれば街が成長する」という時代ではなくなります。
👆重要なのはすでに存在する住宅や土地をどう次の世代へ循環させるか?
私は、これからの自治体の空き家政策には少なくとも
①発生させない
②放置させない
③使える住宅は市場へ戻す
④使えない住宅は除却を促す
⑤除却後の土地を次の用途へつなぐという5つの視点が必要だと考えます。
税制、解体支援、不動産流通、相続相談、福祉、都市計画を別々の制度として扱うのではなく、一体的な「不動産循環政策」として設計することが重要です。
15.まとめ
「空き家をどうするか?」は、未来のまちをどうするか空き家問題は、単なる古い住宅の問題ではありません。
防災、防犯、景観、税制、相続、不動産市場、人口減少、地域コミュニティなど、さまざまな政策が交差する問題です。
2023年の空家法改正で「管理不全空家等」が導入されたことは、国の政策が「危険になってから対応する」から「危険になる前に対応する」方向へ変わったことを示しています。 (国土交通省)
一方で、住宅を解体すると住宅用地特例がなくなり、税負担が増える場合があるという問題も残っています。
ここをどう乗り越えるか?久留米市のように除却後の税負担を一定期間軽減する方法も、一つの選択肢でしょう。
しかし、さらに一歩進めるなら、空き家対策を「空き家を減らす政策」だけで終わらせてはいけません。
空き家や土地を地域の資産として捉え直し、「放置される不動産」から「次の価値を生み出す不動産」へ。
その循環をつくることこそ、人口減少時代のまちづくりではないでしょうか。
空き家をどうするかという問題は「これからの街をどうつくるのか」という問題そのものなのです。
まちづくりは、期間限定ではありません。持続可能な開発が肝心です。
板橋区は、ぶつ切りの再開発でなく、この「空き家対策」を同時に進めなければ、住民主体のまちづくりにはならない事を理解する必要があります。
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